第7章 横暴な要求
目を閉じて、次に起こるであろうことを待っていると…
ん?あれ??
てっきりキスをするのだと思っていたのだけど…
目をそろそろと開けてみれば、至近距離で私を見つめる先生と目が合った。
期待がはずれたのが少し恥ずかしくて、そのまま先生の目を見つめ返しながら、
「キスしてくれるんじゃないの?」
と、聞いてみれば、
「俺の名前を呼んだらな」
と、かえってきた。
ちょっと近づけば、もう唇がついてしまいそうなくらい近い距離。
「やだ」
もう一度、異を唱えてみる。
そんな近い距離で、先生は私の唇を指でなぞる。
「じゃあ、しないぜ?」
そんなことを言う癖に、体勢はそのままで…
いてもたってもいられなくなって、
「先生キスしてよ」
少し睨んで言ってみる。
「呼べよ、名前」
ゾクリとするような低くて甘い声で、先生は囁く。
完全に私は負けてしまった。
「―――け」
「聞こえねえ」
「――すけ」
「聞こえねえな」
「さのすけ」
いつもは先生な人の名前を呼ぶのなんて恥ずかしくて…
でも左之助さんだなんてそんな風にも呼べなくて…
私は生意気にも先生を呼び捨てにした。
「さのすけっ」
もう一度そう呼んだ時、先生の甘くて優しい唇が私の唇を塞いだ。
今までの軽く触れるだけのキスとは違う…
甘くて溶けてしまいそうな深いキス。
私の知らない大人のキス。
帰ってきてからどれくらい経つだろう。
寝る支度をしてベットに入っても、ドキドキして眠れない。
先生を名前で呼ぶのに慣れるには、まだまだ時間はかかりそうだけど…
ゆっくりゆっくり近づいていこう。
今日一日で沢山先生を知ることができた。
もっともっと
沢山知りたい。
さのすけ大好き。
それだけを書いたLINEを送って、私は目を瞑った。