第2章 サクラ散る頃
「仲良しな先輩なの?」
「ん~…姉の友達なんだよね。今のヒト。かっこいいんだけど…ちょっとひねくれ者なんだよね~…」
「そうなんだ…」
ひねくれ者!初めて会ったのに、なんとなくわかる気がして、思わず笑ってしまう。夢主(妹)ちゃんも笑って、二人で笑いながら階段をのぼった。
屋上について、ドアをあける。
目に飛びこんできたのは――――
斎藤先輩が、キスをしている光景だった。
頭が真っ白になる。
えっと…ここには何をしに…
夢主(妹)ちゃんのお箸がなくて…お姉さんに借りにきて…沖田先輩に屋上に案内されて…
そうだ、お姉さんに会いにきたんだ。
ん…お姉さん?
私達に気がついて、斎藤先輩達はこちらを見てる。
斎藤先輩と目が合った気がした。
女の人の方が、夢主(妹)ちゃんに話しかけてる。
どこかで見たことが…
「あ!保健室にいた子だよね?もう大丈夫なの?」
そうだ、さっき保健室にいた綺麗な人。
斎藤先輩とは…やっぱり、恋人なんだよね…きっと。
あんなに素敵な先輩に、彼女がいないわけがないじゃない。
私…どうしてこんなに悲しい気分になってるんだろう…
体の内側から震えがくる。
逃げたい…とにかくこの場から…
「あ、あの…お邪魔しました」
ぺこりと頭を下げて、夢主(妹)ちゃんの手をとって、教室までとにかく走った。
――痛い
心臓?ちがう。
胸のあたりがざわざわもやもやして気持ち悪い。
どうしよう。
私、斎藤先輩が好きなんだ…
「…千鶴が言ってた斎藤先輩って………」
夢主(妹)ちゃんがつぶやく。
夢主(妹)ちゃんに斎藤先輩の話をしたのは、今朝ほんの少しだけ。でも、今の私の態度で…わかっちゃうよね。
「……………」
返せる言葉がなくて、私は黙ったままだけど、そのうち涙が出てきてしまって、とまらなくなった。
「………千鶴」
夢主(妹)ちゃんは複雑な顔をしてる。
わかってるよ、大丈夫だよ夢主(妹)ちゃん。
お姉さんのことだから、私へ何を言っていいかわからないんだよね。
困らせてごめん。
「ごめんね」
消えそうな声で夢主(妹)ちゃんはそう言って、私と一緒に泣いてくれた。
ねえ神様。
どうしたらこの気持ちは消えますか?