第7章 横暴な要求
「じゃあ、明日夕方迎えに行くからな?早く寝ろよ。おやすみ」
電話を切った後も、しばらくスマホの通話終了画面を見つめてしまう。
これが最近私の中での日課になってしまった。
原田先生に気持ちを伝えたあの日から、先生は夜必ず電話をくれる。
スマホ越しに聞こえる先生の声は、なんだか優しくて甘くて…
これが電話で良かったなって思うくらい、私に顔はにやけてしまっていると思う。
あれからまだ1週間。
明日、初めておでかけをする約束をした。
あの日以来、先生に会っていないし、こういう関係になってから会うのは初めてだから、なんだかどきどきしてなかなか眠れなかった。
先生との約束の時間は夕方4時。
まだまだ時間はあるけれど、支度を始める。
今日は地元の大きな花火大会がある。
でも…私達の関係は秘密だから、隣の県の花火大会へ行くことにした。
おととい買いに行ったばかりの、新しい浴衣を着る。
大人な原田先生の隣に居てもおかしくないように、大人っぽい藍色の浴衣を選んだ。
いつもはおろしたままの髪を片方集めて、耳の下あたりで緩くまとめる。
マスカラも丁寧に塗って・・・
よし、準備は完了。
まだ逢ってもいないのに、心臓の動きが異常だ。
ブーブーブー
先生からの着信に素早く出る。
「出るの早いな。着いたぜ?ゆっくり出てこいよ」
呼び出しコールが鳴りだす前に、電話に出てしまったらしい私に、先生はクスクスと笑った。
下駄を履いてからもう一度全身をチェックして、外に出る。
玄関を開けると…
車に寄りかかって、腕を組んでる先生と目が合った。
黒いパンツにシンプルな白いTシャツを着た先生は、学校にいるときとは違う雰囲気で…
息が苦しくなるくらい、私はどきどきしてしまった。
そんな自分を隠す為に、先生に近づいて、
「似合う?」
と聞けば、
「やべえな…似合ってる」
低くて甘い声。
目を細めて、私を見る先生に、家の前だということを忘れて吸い込まれそうになった。