第7章 横暴な要求
さすがに…ここからじゃ気配は感じられねぇが…
今日こそは…何故か屋上に夢主(姉)がいる気がして、階段を上りはじめた。
カタン
屋上のドアを開ければ…
さらさらさらと髪を夏風になびかせて、空を見上げる夢主(姉)の姿があった。
その姿にゆっくり近づきながら、胸ポケットからたばこを取って、トントンと叩いて一本取り出す。
そして、右ポケットからライターを取って、
カチリ
たばこに火をつけた。
その音で振り向いた夢主(姉)に、
「やっと捕まえたな」
と、苦笑しながら言う。
我ながら、余裕がねぇな…と自嘲の笑いでもあるんだがな。
夢主(姉)は、ふいっと視線を空に戻して、
「なにそれ?」
と、くすくす笑ってる。
「お前が避けてるからだよ」
ふぅ…と煙を吐いてそう言えば、
「べつに避けてなんかない…けど…」
と、もごもごと言いながら首をすくめた。
けどなんだよ?と、夢主(姉)の横に移動しながら聞く。
「…べつに」
視線は俺に向かないまま、小さく呟いた。
夢主(姉)と最後に会話したのは、高熱を出した時に家まで送って…その夜、携帯に着信があって、
「先生ありがとね」
と、短く言われて切られた時だ。
そこらへんから夢主(姉)の様子がおかしい。
体育の授業でも、あからさまに俺と目を合わせないし、話しかけても適当にかわされる。
原因は一体なんだ?
女って生き物はよくわからねぇ。
ああそうだ…
「うまかったぜ?」
夢主(姉)は俺を見て首を傾げる。
「さつま揚げだよ。」
「!!」
言葉にならない声が聞こえた。
総司から、誰かさんが俺の為に作ってくれた…と聞いて、夢主(姉)がくれるのを待ってたんだが…夢主(姉)は現れなかった。
諦めて体育準備室を出たところで…ドアノブに袋が提げられてた。
中身はさつま揚げ。
他の女子生徒からは甘い菓子を貰ったのを考えれば、調理実習の課題は菓子だったんじゃねえのか??と、さつま揚げを見ながら、笑いが込み上げたのを思い出す。