第6章 【番外編】僕と彼女の間柄
「ねぇ総司・・・」
1年生の頃のことを思い出して、ぼーっとしていた僕に、夢主(姉)ちゃんは真剣な顔で話しかけてきた。
なに?と言えば、
「恋しちゃったみたい。」
そんなことを言い出す。
1年生の終わり頃、一君を好きになった時も、こうやって僕に明かしてくれた。
っていうか今恋をしてるのなんて、結構前から知ってるけど。
「ふぅん。」
と、僕はいつもの通りの返事をする。
深く聞きもしないし、頑張ってネなんて応援の言葉もかけない。
でも、僕のこんな返事にも、不満は言わない。
「最近にやけてて気持ち悪いよ?」
こんな意地悪な言葉を言っても、顔色変えずに受け流される。
まぁ…だから3年生まで一緒にいられたんだろうけど。
僕も明かそうかな。
好きな人できたよって。
まぁ・・・試験が終わってからにしよう・・・
これが僕と彼女の間柄。
近づかないけど、遠すぎず。
それはこれからも変わらない。
「あ、ねえ夢主(姉)ちゃん。今回はお弁当いらないよ。」
「え?なんで?」
だって夢主(妹)ちゃんがまた気にしちゃったら嫌だしね。
でもそんなこと夢主(姉)ちゃんには言わない。
「変わりにジュースおごってよ。」
「あ…ああ!そうだよね〜!私も気をつけよう。あ、私のことお姉ちゃんって呼んでもいいよ?」
そう言いながら笑ってる夢主(姉)ちゃん。
なーんだ。
バレちゃってるのか。
ま、いいけどね。
教室を出ると、土方先生とすれ違った。
ああそうだ。
古典教える準備しなくちゃ。
ふと・・・土方先生の後ろ姿を見ながら、ここは敢えて・・・夢主(姉)ちゃんが50点をぎりぎり取れなかったら面白いなぁ。
そんな企みを思いついて、僕は一人笑いながら教室まで戻った。