第6章 【番外編】僕と彼女の間柄
「あーやばい・・・古典の点数50点切ったらまた呼び出すって脅されてるんだった・・・」
「50点?土方先生甘いね。」
「ちっとも甘くないんだけど。総司の頭と一緒にしないで・・・。もう最近は授業中の土方先生の声すら子守唄に聞こえるわ。」
古典がとにかく嫌いだと、試験間際だからって慌ててる。
この姿を見るのは何回目だろう。
「絶対50点以上取れるようにしてあげようか?」
このやりとりも何回目だろう。
「終業式までのお弁当でどう?」
「いいね。」
僕が勉強を教えて、夢主(姉)ちゃんにはお弁当をもらう。
これは一年の頃から、僕達の試験前の恒例行事。
もう何回目だろう・・・
入学したての僕は、せっかくの高校生活だというのに、なんだか毎日鬱々としてた。
あれは・・・桜の花が沢山散って、桜の木がくすんだ色に染まりはじめてた頃。
屋上から見る空は、近いようで遠くて・・・
校庭の周りに咲く桜を見ながら、中途半端な色をしたこの時期の桜も嫌いじゃないな…なんてぼーっと考えてた。
「―――聞いてんの?生意気だっつってんの」
ああ・・・まただ。
昼休み、屋上の出入口とは反対側の隅で、僕は寝転がっていれば、最近やたらと女の子達の物騒な声が聞こえる。
数人の女の子達が、毎回こんな言葉を投げていた。
そして、気がおさまったのか、しばらくすると出入口のドアの音と共に、女の子達の気配も消える。
はぁ…
女の子って怖いね…
そんなことを思いながら、頭の後ろに手を置いて、寝転んだまま空を見上げる。
念願の近藤さんが校長を勤める学校に入って、高校生活が始まったけど…
つまんないな…
まぁまだ四月だけど…
ふと…人の気配がして、再び耳をすませていれば、
「はぁ…なんでこうなっちゃうんだろ……」
小さく呟く女の子の声がした。
それはとっても寂しくて悲しい声色で…
気になって声の方まで行ってみれば…
さらさらと髪を春風になびかせて、空を見上げる女の子の姿があった。
僕の気配に気がついて、こちらを振り向く。
どっかで見たことあるような…
誰だっけ?
一瞬そう思ったけど、パタパタと屋上から出て行ってしまったから、思い出す間もなかった。