第5章 夏の暑さと恋模様
雪村への感情が、日に日に大きくなっていく。
…雪村…知っているか?
俺が、部活が休みであるから、しばらくは一緒に下校することもないだろう…と、残念に思っていたことを。
稽古中、背後に感じたあんた気配に、心が弾んでしまったことを。
こうして何気ない会話をして、二人で歩く帰り道が、俺は嬉しくてしかたない。
「明日は数学なんです。数学は苦手なので帰ったら頑張らないと。」
難しい顔をして、ぶつぶつと話す雪村の横顔をじっと見つめる。
その視線に気がついて、
「?」
首を傾げて俺を見上げる。
なんて可愛らしいものだろう。
目を細めて、そのまま見つめていれば、みるみる赤くなって目をそらされてしまった。
今すぐにでも、気持ちを伝えてしまった方がいいのだろうか?
だが…まだ早い。
大切に育てたいのだ…この気持ちを。
雪村の家の前で、また明日、と告げて別れる。
明日はもっと、明後日はさらにもっと…この気持ちが大きくなるのだろうか。
未だ想いが通じ合っているわけではないというのに、俺は浮足立つ感情でいっぱいだ。
そういえば、明日は数学だと言っていたな。
帰宅したら、永倉先生のテストの傾向や特徴を雪村にLINEしようか。
時間をかけて、沢山話をするとしよう。
大切にしたいと思う気持ちだから。