第5章 夏の暑さと恋模様
ぶはははは
僕は思わず吹き出した。
今は調理実習の時間。
今日は、「おやつ」をテーマに各自好きなものを作ってる。
料理室中に、お菓子の甘いかおりが広がってるのにもかかわらず…目の前にはさつま揚げらしきものを真剣に揚げてる夢主(姉)ちゃんがいる。
きっと、左之先生にでもあげようとして、甘いお菓子よりも喜びそうなものを考えたんだろうね。
それにしても…前から思ってたけど、
「夢主(姉)ちゃんて一途だよね。」
クラス中がお菓子を作ってる中、ひたすら揚げ物をしてる姿に、僕は笑いが止まらない。
っていうか…いつの間にそういうことになってるわけ?
それを問えば、
「たっ…ただの…か、片想いだもん!」
なんてかわいらしく真っ赤になっちゃったりしてさ。
夢主(姉)ちゃんてこんなキャラだったっけ?
一君のことは散々ふりまわしてたのに。
左之先生相手だとそうもいかないみたい。
最近、左之先生がいると夢主(姉)ちゃんの様子がおかしい。
合宿のマネージャーお願いした時に、左之先生の名前を出せばビンゴだった。
そして今…一君にだってわざわざあげに行かなかった夢主(姉)ちゃんだったのに…左之先生にあげようと、頑張って作ってる。
「ねえ総司。一個食べてみて?」
この時間はお腹が空くし、いつもなら食べるけど…なんだか毒味させられてるみたいで嫌だ。
「いらな~い」
「そう言わずに食べてよ」
無理矢理押し付けられたから仕方なく食べた。
おいしいと伝えれば、うれしそうに笑って、よかった~とか言ってる。
恋する乙女はなんちゃらっていうけど…女の子ってずるいよね。
そういえば…この前夢主(妹)ちゃんが僕にカップケーキくれたなぁ。
こんな風にかわいらしく作ってたのかな。
それを想像したら、なんだか顔が緩む。
きっと、夢主(姉)ちゃんより器用じゃないから、千鶴ちゃんとかに助けてもらいながら一生懸命作ってくれたんだろうな。
やばい。
可愛いいかも。
「総司…なに笑ってるの?」
不思議そうな夢主(姉)ちゃんを無視して、僕はにやけながら自分の調理を続けた。