第5章 夏の暑さと恋模様
…いた。
目の前に。
合宿に連れていっても夢主(妹)ちゃんをイジメない…
僕にとっても害はない…
しかもたしか意外と家庭的なコ。
僕は目の前の席にいる夢主(姉)ちゃんに、合宿の話と短期マネージャー募集の話をする。
「無理。」
だよねぇ。
何故これが名案だと思ったんだろう…と思わず笑ってしまう。
でも、断られるわけにいかない。
夢主(姉)ちゃんくらいしか思いつかないし。
僕ははぁ~っとわざと大きなため息をついて、悲しい顔をする。
大抵女の子に話をする時は、これでうまくいくんだけど…
さすがに夢主(姉)ちゃんには通用しなくて、僕を睨んだままだ。
そして、「無理」の単語を繰り返してる。
う~ん…夢主(妹)ちゃんにも頼んでもらおうかな。
あ~…だめか…さすがに…千鶴ちゃんと一君のことがあるし、夢主(妹)ちゃんだって気が引けるはずだ。
ん…そういえば…
この勝負…僕の勝ちだよ夢主(姉)ちゃん。
勝利の笑みが浮かぶ。
「…なんで勝ち誇ってるの?」
怪訝な顔をする夢主(姉)ちゃんに、
「左之先生も来るんだけどな~」
と、笑顔で言ってみれば…ほら…わかりやすいよね。
真っ赤になっちゃって口をパクパクさせてる。
こうやって見ると、夢主(妹)ちゃんに似てる気もするけど…夢主(妹)ちゃんの方が可愛いな。
「ちょ…なんで…」
「え?何のこと?左之先生が来るのが何?」
あ~…と力なくうなだれる夢主(姉)ちゃん。
「もういいじゃん一君なんてさ。千鶴ちゃんとまだくっついてなくてイライラするけど。」
夢主(姉)ちゃんは、大きくはぁ~…とため息をついて、考えこむ。
「で、どうする?あ、別に嫌だったらいいんだよ。合宿中、左之先生ファンの子なら邪魔じゃなさそうだし、ファンの子に頼んじゃおうかな?」
「………」
ものすごく不機嫌な顔をして、夢主(姉)ちゃんは合宿マネージャーをひきうけてくれた。