第4章 葉は緑、空は雨色
「あの!すごくかっこよかったです!これ読んでください!」
そう言って差し出された手紙を、
「悪いけど、受け取る気はないよ。」
と、自分でもちょっとかわいそうかな?と思うくらい、冷たく突き離して立ち去る。
今日はこれで七人目。
読んだところで、その子とどうにかなる可能性なんて無いんだから、これでいいんだ…と思う。
副顧問の新八先生が出張で来れなくなった代わりに来てた左之先生が、そんな僕を見てたみたいで…
「相変わらずもててるな。女の子にゃ酷だが、お前の対応は間違っちゃいないと思うぜ?」
なんて、言ってきた。
「別に気になんてしてませんよ。」
って応えたけど、左之先生の言葉はちょっと嬉しかったり。まあ左之先生にはそんな事絶対言わないけど。
「沖田先輩?」
考え込んでた僕の顔を、隣を歩く夢主(妹)ちゃんが覗きこんでた。
剣道大会の帰り道。
駅まで行く坂道を、部員達と歩いてる。
「あの…さっきの金髪の人…」
ああ、夢主(妹)ちゃんはきっと風間君…だったけ?さっき何か言われたのを心配してるのかな。
「もしかして…沖田先輩…強いから狙われてるとか…」
ぶつぶつとそう言う夢主(妹)ちゃんは何か違う方向に考えてるみたい。
面白くなって、少し困った顔を作って乗ってみる。
「睨んでる顔がさ…鬼…みたいなんだよね。」
「ええ?!お…鬼?!睨まれたんですか?」
「うん…睨まれるんだ。」
そんなやりとりをしていると、夢主(妹)ちゃんの顔はどんどん険しい顔になって、辺りをキョロキョロと見回しはじめた。
「なんでキョロキョロしてるの?」
「不意打ちをされるかもしれないじゃないですか!」
威嚇をする猫みたいな顔をしてる。
もう笑いが堪えられないや。
僕がクスクスと笑っても、夢主(妹)ちゃんは相変わらず深刻な顔のままで、
「沖田先輩がヤンキーに狙われてるなんて…」
なんて言い出したから、声を上げて笑ってしまった。
「な、なんで笑うんですか!!!」
だめだ…笑いが止まらない。風間君の金髪と白い学ランを思い出す。
「いや…あははは…ごめん…あはっははは…違うんだよ…あははははは」
「違う?」
なんとか笑いをおさめてから、難しい顔をしてる夢主(妹)ちゃんを見た。