NONFICTION【家庭教師ヒットマンREBORN!】
第12章 大切なもの
額に灯るオレンジ色。不規則に揺れる炎に対して、沢田くんの目は澄んでいた。そこからは迷いも、不安も感じない
ボウッと一瞬強く揺らいだ
来る、そう直感で感じ取った刹那、新しいアイディアが過ぎった
閃光弾が光を放つその瞬間の如く、事は一瞬にして転ずる
『匤!カンビアーレ!!』
「また無茶やな…っ」
叫ぶとほぼ同時、沢田くんは両手から炎を後方へ吹き出した。真っ直ぐ私に向かって来る。スクアーロではなく、標準は私だ
沢田くんが一発入れるのが先か、私が技を完成させるのが先か、
全神経を足に集中させ、体重を前に投げ出した。
意図せずとも体は風に乗る
風の速度に体のコントロールを左右されないよう匤で身体的スピードを補う。両足を黒い鋼が覆った
『Nero lancia dei vento』
スピードなら負けない。
一気に決める……ッ!
「…エクスバーナー」
『!』
猛スピードで突っ込む私に対して真正面から放出攻撃……!しかも炎の純度から見てさっきのより物凄い威力のはず
(……突っ切る)
真正面からの炎をくぐり抜けるように蛇行し、炎の下に潜る
「姿が…っ!」
沢田くんの視界から完全に途切れた!
今しかない……!!
『疾風迅雷、 風巻…ッ』
「十代目!!」
膝を着いたのは沢田くんだった。駆け寄ろうとする獄寺くんをスクアーロが止める。
完全に決まった。間合いもタイミングも完璧。
なはずだった
『…っ、手が』
「がはっ、…死ぬ気の、ゼロ地点突破……ファーストエデション……」
攻撃の深さは私の方が上だった。しかし沢田くんが最後に残したのは、この右手の氷だけ
けれどそれがどんな攻撃よりも恐ろしく強いものか一瞬にして悟る。
バタンッ
「十代目ぇー!!!」
「余所見してんじゃねェカスがぁ"!!」
沢田くんが意識を手放したからか、氷はこれ以上侵食せず留まった
凍らされた右手は冷たさよりも、硬くそこだけ石になったかのような違和感を与えた
感覚がないのだ。
そしてもちろん炎を出すことも出来ない
『…っ、』
不覚…
自分の攻撃の合間にやられるなんて
本物の殺し合いなら死んでいた