第1章 短編集1
《頭のいい貴方に解けない恋文を》
貴方の地下にある部屋が好き
貴方の部屋の血生臭い匂いが好き
貴方が好き
貴方の匂いが好き
「おい、お前そこで寝るな」
「いいじゃない、邪魔はしないから」
拷問用の寝台にうつ伏せになって言う私に舌打ちをして、落ちている死体を放り投げた
この血生臭い匂いが好きなんだ、と言えば彼は「ワタシとお前の共通点てロクなのないな」と言う。
私と彼の共通点
血が好き
拷問が好き
晴れた空が嫌いで曇った空が好き
殺しが好き
絵が好き
彼は描かないけどね。
彼との最初の出会いも、彼が私の絵を買っていってくれた事だった。後々から考えると信じられない事だったが。
普段は盗みをして暮らしていると聞いたから。なんで私の絵は買ってくれたの?って聞いたら「お前の絵、買うに値したね」って言ってくれた。
思えばそれ以来誉めてもらってない気がする。
「ねえ、フェイタン」
「何ね」
「好きだよ」
「あ、そ」
告白したのも私。殺し、拷問している時の彼も、普段の彼も好きだから。付き合ってるけど彼は好きとか言う言葉は一度もくれない。そしてこのままずっと言わないのだろう。言ってもらおうとも思わないけどね。
「ねえ、フェイタン」
「何ね」
「ちゅーして」
気分が良さそうな時を見計らってそう言うと、無言で触れるだけのキスをしてくれる。私が舌をおずおずと出すと仕方ないと言うように深く口付けてくれる。
キスの後、頭がボーッとする。
その先は彼の気分次第。押し倒してくるか、さっさと向こうに行ってしまうか。一種のギャンブルをしている気分になる。