第16章 ♡Story６３♡　思い出した約束、そして…

「……先生、先生もちゃんと……百合を信じて。
心の底から……それだけでも、九条に対しての感情も変わるんじゃないですか？」



「変わる……？」



「百合はアンタを信頼している……アンタも、
百合をちゃんと信頼する必要がある……」



「……。」



「愛情だけじゃなくて……信頼の気持ちも大事だと思いますよ。」



「信頼の、気持ちか……」
(確かに、ちょっと欠けている部分があったかもしれない……)



「でもだからって、今のアンタが百合を完全に信頼してないって
言ってるわけじゃないんだ。ただ……

ただ、もっと百合を信頼してほしい……九条と百合の関係を、
信じて欲しい……ただそれだっすよ。」



「……。」



「俺まで九条の肩を持つようなこと言っちゃいましたけど……俺は、
アンタしかいないって思ってるから……百合を心から愛せるのは、
アンタしかいないって信じてるから……」



「……。」



「でも、さっき言ったように九条は本気だ。
あの約束も……果たそうとしている……」



「……その約束、もし果たせることになったら……どうなる？」



「もし、その約束が果たされてしまったなら……
ふたりの間に本当の信頼というものはなかったってなるね。」



「……その約束、果たされる可能性は？」



「……ほぼ、０に近いと思いますよ。九条には、悪いですけどね……」



陸は複雑そうに顔を俯かせた。



「……わかった。お前の言うとおり、百合をちゃんと信頼する……もう少し、
九条とも向き合ってみることにするよ……」



「そうしてくれると、ありがたいっすよ……
それじゃ、百合の機嫌がまた悪くなる前に行ってあげてくださいよ。」



「そうするよ……」



「……指輪、渡しちゃいます？(笑)」



「……多分な(苦笑)」



「ヒュー！まぁ、がんばってよ……」



「ありがとな……」



太輔は早歩きで階段を登っていき３階を目指した。



「……。」



「……おい、」