藤ヶ谷先生、大好きですよ?3ーThirdSerieSー
第12章 ♡Story59♡ 溢れる気持ち
「っくそ……」
勝手に出てきた涙、俺はそれを拭うように手の甲で目をふさいだ。
「っなんで、こんな気持ち……」
凄く、胸が痛くて……苦しくて……
会いたい……
百合に、会いたい……
「っ……百合……」
また涙が溢れ出してきた……らしくもねぇ……
でもそれくらい俺は……百合が好きだ……。
餓鬼の頃の記憶だって、鮮明に覚えている。
俺はずっと、待ち続けた……でも、
このまま待っていてもアイツは……
『百合は絶対、お前のところにはいかない。
断言する……』
「っクソ……!
何なんだよ……」
百合にただ会いたくて仕方ない……触れたくて仕方ない……
「っ百合……」
ベッドに寝転んでいると、あのぬいぐるみがふと視界に入ってきた。
「っ……なぁ、」
和真は独り言のようにぬいぐるみに話しかけた。
「百合は、もう……俺のところには戻ってこないのか?
あの約束も……全部嘘だってことに、なるのか……?」
話しかけてももちろん、ぬいぐるみは一切喋らない。
「っ……俺が、引っ越さなければ……
ずっと、この街に残っていたら……アイツには盗られなかったのか?
なぁ……誰か、
教えてくれよ……」
「……。」
うさぎのぬいぐるみは、ただ和真をボタンのついた目で見ているだけだった。
でもその表情は、少しせつないものにも……見えてきたのだった……。
まるで、百合が自分を見ているかのように……。