第10章 ♯9
いつの間にか彼の愛馬が傍に来ていた。
いつものように彼の頭を突いて、彼の匂いを確かめていた。
彼が反応しないことに気付いたシャレットは黒いまん丸な目で私を見据えた。
今の私には責められているようにしか思えず、視線を逸らした。
蒸気が消え、開けてきた視界には風に揺れる金髪が入ってきた。
いつも手入れされ、艶々しかったその髪は・・・・所々血がついて、彼女のものだとは思えなかった。
最年少の私を気遣い、いつも傍に居てくれたミヤさん。
「は素質があるんだよー!呑み込みが早いし頭もいい!尊敬するよー!」
と、にこやかに褒めてくれていた。
ミヤさんに褒められたくて、私頑張ったんです・・・。
私、巨人3体倒しましたよ?
目、あけてください・・・・。
いつもみたいに、笑って褒めてください・・・ミヤさん・・・。
一人っ子だった私は同じ班にあなたがいて、お姉ちゃんが出来たって本当に喜んでいたんです・・・。
毎日、訓練の前に髪を結ってくれてありがとうございました。
でも、ごめんなさい。
私、本当は自分でも出来るんです。
お姉ちゃんって呼べる人が出来て、嬉しくて、毎日甘えていたんです。
訓練も遅くまでやっていたの知っています。
私は素質がないし、努力しなきゃいけないんだって、笑いながら言ってたけど、気付いてました?
あなたの強さは目を見張るものでした。
ミヤさんがいないとき、ネス班長が、
「ミヤには敵わない」って言ってたんですよ・・・・。
他人に甘く、自分に厳しいミヤさん。
私は人を思いやる気持ちを、あなたから教わりました。
あなたのお陰で人に接する喜び、感謝を知ることができました。
あなたのような人になりたい。
女であり、強くあり、そして優しい。
あなたは私の、何よりの誇りです。
「・・・・・あ・・りがとう、ございました」