第10章 ♯9
少し離れたところにシスさんの馬がいた。
執拗にそこの匂いを嗅いで、鳴く。
そこには、何もないのに・・・。
シスさんの馬に近づいて鬣を撫でる。
辛いね・・・
苦しいね・・・・
私も同じ気持ちだよ・・・・。
班のムードメーカーだったシスさん。
いつもネス班長にイタズラして、怒られて、笑ってた。
訓練がうまくいかなくて苛々してた私を笑わせることができるのは、シスさんだけだった。
私は、これから、どうやって笑ったらいいんですか・・・。
シスさん、覚えていますか?
くだらないことで散々私を笑わせて、
その後
「辛いことがあったら、今日を思い出せばいい。そうやって乗り切って毎日を過ごせば、更に楽しいことがあるんだよ。辛い過去なんて、みんな持ってる。でも俺は毎日笑ってる」
って言ったこと。
あなたの笑顔の裏の過去なんか考えたことがなくて、自分の思惑の幼さを知りました。
あなたのように寛大にはまだなれないかもしれません。
でも、近づけるように、頑張ります。
「ありがとう、ご・・・ざいまし・・た」