第6章 戯
心拍数が平常値に戻った頃。
俺の身体は、公園のベンチに沈んでいて。
鬼ごっこに負けたことで、気持ちも沈んでいて。
背凭れに背中を預けて、空を見上げていた。
「甘いモン食いてェな…」
真選組の屯所に向かうべきか。
尻尾を巻いて、家に帰るべきか。
チョコレートパフェにするべきか。
白玉クリームあんみつにするべきか。
真面目に考えて。
考え抜いた答えは。
「あずきバー食いながら帰るが…ファイナルアンサーだ」
さっきまでの疲れも退いた。
服が吸い込んだ汗はまだ乾いていないが。
歩いていれば、それも解決するだろう。
不意に立ち止まって、ターミナルを見上げる。
逢うのは先だろうと読んでたが。
存外、簡単に見つけた。
「何処かの星に行っちゃったって…どうしよう、銀ちゃん」
気落ちした、神楽の声を思い出す。
珍しく標準語だった。
それだけ、あの日のことを気に病んでる。
「どうします?銀さん」
神楽の横に立った、新八の顔を思い出す。
メガネしか思い出せねェけど。
思い詰めた声音だった。
「もう少し、足掻いてみるしかねェな」
面倒は御免だ。
そう思いながら立ち上がって。
ターミナルを背に歩き始めた。
まだ、終わらねェ。
必ず捕まえて。
俺が知りてェこと。
洗いざらい、話してもらうとするか。
『お前の本心、全部吐かせてやらァ』