第26章 告
何度か、髪を撫でて。
まだ見慣れてはいない、寝顔を眺める。
怖い夢、見ねェといいけど。
腰に回された腕は、強すぎず弱すぎず。
適度な力加減。
俺が動くと、力が籠って。
離さない、離れないと、意思表示されてるようで。
それが、ちょっと嬉しくなっちゃう俺って。
今、俺、どんな顔してるんだか。
時折、半開きの唇が微かに動く。
幸せそうに笑ったり、首振ったり。
寝てるときですら、こんだけ表情豊かな女。
見てて飽きるはずがない。
「け…こ……して……」
け、こ、して?
ああ、結婚して?
え、結婚してェェェ?
ちょ、誰に言ってんの、それ。
夢の世界で、誰にプロポーズですか、オイ。
許しませんよ、そんなん。
さっきと話が違うじゃん。
そっちが本心?
俺以外の男の存在、認めませんよ。
「ぎ……さ、ん……」
…………俺?
「ない……」
銀さん無い、って何だァァァ!
お願い、300円あげるから。
もう何も言わないでェェェ。
傷つく。
寝言と解っていても、ものっそい傷つく。
「で、も…………す……き……」
俺を?
ちゃんと好きでいてくれてる?
夢の中でも、俺だけ見ててくれてる?
昼寝してる姿に、こんだけ焦らされて。
動向が気になる。
布団でゆっくり休ませてやればいいのに。
手元に置いておきたいんだから。
夢にも嫉妬、末期だろ。
階段を人が上る気配。
それに続いて、引き戸が音を立てて開く。
「ただいまヨ~」
「銀さん、起きてますか?」
メガネとチャイナ娘の帰還。
どうやって説明して。
どうやって納得させるか。
隠すつもりは、更々無いけど。