第24章 呼
「足りねェ」
もっとと促す俺に。
髪、額、頬、鼻。
軽く口付けながら。
朱里ちゃんは、何度も俺を呼ぶ。
「銀さん」
こんな色した部屋に、酷く不釣り合いな戯れ。
俺、今、ヤバい。
朱里ちゃんに甘やかされてる。
「銀さん」
「はい」
「坂田さん」
「………」
「銀、ちゃん」
「ん?」
「銀さん」
「はい」
名を呼びながら、朱里ちゃんはクスクスと笑ったまま。
俺の髪を撫でては、頬擦りを繰り返してる。
「甘くて、フワフワ」
そう呟いたが最後、動きを止めて。
苦しいほどに、俺の頭を抱き締めた。
「……ココが、帰ってくる場所」
「うん」
「待ってて、くれますか?」
「ココ、特等席だろ?ちゃんと空けとくし。待つのは十八番になっちまったから……そんな心配しなくても浮気しないし、朱里ちゃんだけだし」
『待ってる』と付け加えて、絡めた腕に力を込める。
スベスベの肌。
今日の午後から、触れられない。
「ありがとう、銀さん」
視線が合って、軽く唇が触れ合って。
不安げな表情が消え去った朱里ちゃん。
「もう、怖くない」
そう言って、身体を起こした。
「ちょ、前を隠しなさい、女のコなんだから。もうちょっと遠慮して、マジで」
無防備にも程があるって。
何度言い聞かせても、変わんねェ。
それが自分の惚れた女だって。
わかっちゃいるけど。
もう、彼氏というよりお父さんの心境だろ、コレ。