第24章 呼
帰り支度をして、部屋を出る。
忘れ物はないかと声を掛けて。
ピンクの照明に慣れた目を、日光の元に晒す。
あと半刻もすれば、正午。
約束の時間が近い。
あのあと、一度だけ抱いた。
欲しがったのは、俺の方。
前を隠せと注意しといて。
我慢できなかったのは、俺の方。
優しくしてやれたか、正直、自信がない。
ただ、その行為を終わらせたくなくて。
必要以上に、時間を掛けた。
「辛ェか?」
俺の問い掛けに、肩に預けた頭を数回振って。
「ううん、平気です」
そう言って、笑う。
そういう気丈なとこも、気に入ってんだけど。
ちょっと無理させた感が残る。
軽い絶頂、何度も与えて。
最後は散々焦らして、意識飛ばした。
「家まで、おんぶしてやろーか?」
朱里ちゃん、腰が怠くね?
イヤ、俺のせいだけど。
「歩けます」
「何、恥ずかしい?」
「一緒に、歩きたいの」
組んだ腕を解いて、手を繋ぐ。
昨夜と違う景色に見える、ホテル街を。
指を絡ませて、歩き出す。
「私が走れなくなったら」
小さく呟いた声に。
「俺が背負って走りゃいんじゃね?」
銀さん、おっさんだけど。
惚れた女を置いてきぼりになんて、しねェよ?
時々振り向いて、後方確認。
してやるから、心配いらねーし。
追い越したら、待っててくれれば追い付くし。
道が一本なんて、決まりはねェから。
別の道に迷い込んでも、次の交差点で。
銀さん、ちゃんと待ってるよ?