第6章 引き抜き
きちんと消毒を済ませ、身体や心を清潔にしてから神聖なるオペ室に脚を踏み入れる。
オペ室は特別だ。
外科医が最も生きる場所であり、また外科医が最も危険に晒される場所でもある。
成功か、失敗か。
その2択を常に迫られる。
「麻酔準備大丈夫かな?」
「大丈夫です」
「じゃあ始めようか」
「言われなくても」
オペ室では麻酔科医も患者の命を握る。
オペ室の奴隷と言われる程に過酷で、人材不足。
私はまず開胸し、胃周囲の液体貯留を取り除く。
それが終わると損傷箇所の処置を済ませ、閉腹する。
一方の神崎は局部麻酔も導入し、頭部を切り開く。
手速く処置を済ませると、閉じた。
「ふぅ…」
「お疲れ様です。
神崎先生、霜月先生」
この患者…重傷には重傷だけど、今の救命が処置出来ない程とは到底思えない。
違和感を拭えぬまま、オペ室を去る。