第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
夢主(妹)が広間へ戻ると、 討ち入りに行く隊士達の中に千鶴の姿があった。
「雪村君には伝令係になってもらう」
近藤が千鶴を連れていくと言い出したのだ。
ちょ!そりゃ危険すぎるよ近藤さん!池田屋が当たりなのに!
千鶴を連れて行く、という突拍子もない発想に、心の中で思ったことがうっかり口に出てしまいそうになって、夢主(妹)は慌てて両手で口を塞いだ。
意気揚々と討ち入りに出る隊士達と千鶴を見送る。
夢主(妹)はその背中を見つめて、知っているのに何もできずにいる自分の不甲斐なさに唇を噛んだ。
「手薄になった新選組の屯所を狙う者がいるかもしれません。」
出かけた隊士の後姿を、見えなくなるまで見つめていた夢主(妹)に、山南が声をかけた。
山南さんも辛いんだ・・・行きたいよね?きっと。
声をかけてきた山南の表情はどこか悲しげで、夢主(妹)はそんな山南に言葉が返せなかった。
「ここがいざという時は、夢主(妹)君・・・頼りにしていますよ?」
山南は優しく声をかける。
そうだ・・・ここで出来ることを私はしなければ。
土方さんにも屯所を頼むって言われたし。
心を切り替えて、広間へ戻る。
それと同時に、夢主(姉)がどこからか戻ってきた。
夢主(姉)の姿は今まで見た事のない黒い装束で、彼女が新選組で、本当に「仕事」をしていることを夢主(妹)に実感させた。
「山南さん。お役人さん達は一向に外に出てくる気配ないです。あ・・・でも準備は万端みたいで、人も沢山集まってます。とりあえずこのまま近藤さん、土方さんへ報告へ行ってきますね。」
山南にそう報告をする夢主(姉)は、このぴりぴりした空気に似合わない声色で、夢主(妹)は姉がこんな時でもいつもの調子なことに少し安心をした。
お姉ちゃんはそっちの調査してたのか。
会合場所探しは小説とかに書いてあったように山崎君なのかな・・・
その時、音もなく襖が開いて、
「山南総長。会合場所が池田屋と判明しました。」
と、山崎が顔を出した。