第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
しばらくすると討ち入りが決まった。
準備の為に千鶴と夢主(妹)も広間へ呼ばれる。
「動ける隊士が足りていない。近藤さんの隊は十名で動くそうだ。」
「俺ら土方さんの隊は二十四人だったか?・・・・・・隊士の半分が腹痛って笑えないよな。」
斎藤と原田が隊列についての話を夢主(妹)は黙って聞いていた。
やっぱり・・・池田屋には本当に十名で行くんだ・・・
私も近藤さんの隊に入れば役に立てるかな?
最近素振りは真剣で稽古をしている。
だけど・・・
人を斬る覚悟は・・・
そんなこと言ってる場合じゃないよね?
よし、そう気合を入れて、土方の元へ急いだ。
「駄目だ。おめぇは屯所に残れ。」
私を近藤さんの隊へ、と言い出した夢主(妹)に、土方は即答で却下した。
近藤さんの隊の人数を聞いてきたのか・・・それなりの覚悟を決めた面してやがる。
自分の元へ走って来た夢主(妹)を見て、土方はそう思ったが、以前・・・沖田が初めて人を斬ってきた時の、なんともいたたまれない苦い気持ちを思い出す。
そして沖田と夢主(妹)では立場が違う。
いきなり戦いの中へ放り出して、危険にさらすなんてことはさらさらできなかった。
例えば・・・こいつが何も出来ない女なら同行させてもいい。
それなら・・・全力で守るのみだ。
だがこいつは、守られるよりも、確実に戦いの中へ入っていくことを望むはずだ。
「・・・屯所を頼む」
そう言って、忙しく土方はその場を去った。