第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
朝から思い出せなくて気持ちが悪かった何かが、脳内に鮮明に思い出された。
池田屋事件だ・・・
元治元年六月池田屋事件!
さっき土方さんが言ってた「古高」が、古高俊太郎であるならば、それは今夜起こる出来事だ。
たしか、どこで会合が行われてるかわからなくて少人数で乗り込んだんだっけ?
そうなると・・・会合が行われる場所を私は知ってしまってる。
夢主(妹)がここに来てからずっと悩んでいたことが、とうとう起こってしまった。
知っている史実をどう消化するか・・・
100%何も言わずに黙っているか・・・
それともやっぱり、有利な情報は、監察方の夢主(姉)を通してでも出していくか・・・
いくら悩んでも答えは出てこなかった。
いっそ、歴史を変えてしまえるほどの知識が入っていればいいのだけれど、そこまで細かい情報は頭に入っていない。
夢主(妹)が分かるのは、現代日本人の「一般常識」程度なのだ。
此処で生活している以上、「歴史をかえてしまう」ということへの不安はなかった。
不安がない、わけではなかったがそれどころではなかった。
むしろ自分の身に起こったことに対して、一生懸命に生きなければ・・・と、そちらの方が重要だった。
池田屋では新選組は大手柄をたてるはず・・・
中途半端に関わって歴史の軸を変えてしまったら、その大勝を逃してしまうかもしれない。
だったら・・・
夢主(妹)は覚悟を決めた。
何も言わない、と。
一瞬、夢主(姉)に情報を出せば、何かしらは調べがついているはずの監察方から裏づけされた情報を持ってきてもらえるのでは・・・と思ったが、それもやめておいた。
大丈夫。
私は私の前に降りかかった出来事に全力で向き合おう。
そう心に決めて、自分の仕事に戻った。