第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
姉妹がこの世界で・・・そして新選組で生活するようになって半年が経った。
二人共、生まれ育った時代と全く違う、本当の意味での「命がけ」という生活に、少しずつ慣れてきていた。
夢主(姉)は監察方で、それなりに血生臭い現場に行くことも経験し、夢主(妹)は斬りあう現場に居合わせたこそなかったが、返り血を浴びて帰ってきた隊士達を最近はよく見かけていた。
それぞれ、覚悟はできていると、腹をくくっていると、自ら思いはじめた六月のこと。
本当の覚悟は・・・
この日を境にすることになる。
「今日も一日、平和でありますように。」
土方の部屋の空気の入れ替えをする為に、襖を開けて、夢主(妹)は、空を見上げてつぶやいた。
これは夢主(妹)の毎日のいわば一日をはじめる為のルーティーンでもある。
今日ははじめて千鶴に外出許可が出て、千鶴はうれしそうに支度をはじめていた。
よかったなぁ。半年だもんね・・・よく我慢したよ千鶴。
夢主(妹)は、相変わらず眉間に皺を寄せながらひたすら何か書き物をしている土方を見ながらそう思った。
そしていつものように、紙をまとめて作った自作の手帳を開いて、自分の仕事を確認する。
もう六月かぁ・・・
ふと思った。
ん?元治元年六月?
何かひっかかる年号だった。
なんだっけ・・・
夢主(妹)は、一応日本の大きな歴史の事件や年号は頭に入っていたものの、新選組の歴史に関して特に重点的に知っているわけではなかった。
史実をしっている、ということ自体を隠しているし、自分も絶対にそれについて話さないと決めている以上、思い出したところで辛いだけだ。
だから普段は思い出せないことを掘り返そうとは思わない。
だが、今回ばかりはどうしても思い出せないのが気持ち悪かった。
昼過ぎ、屯所内は騒がしくなった。
どうやら昼の巡察部隊が大捕り物をしたらしく、土方もいつもより眉間の皺が深い。
「総司の野郎・・・先走りやがって・・・まあいい、古高を前川低へ連れて来い。」
土方が指示をしている声が聞こえた。
ふるたか?ふる・・・ふるた?ふるたか?
あ・・・
古高俊太郎・・・