第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
「千鶴ちゃん、夢主(妹)、おやすみなさい。あ!千鶴ちゃん、いつもおにぎりありがとう。」
そう言って、夢主(姉)は再び部屋を出て行った。
「おにぎり?」
「うん。夢主(姉)ちゃん、ごはんもいつ食べてるかわからないから、山崎さんにお願いして握り飯を渡してもらってるの。」
千鶴の言葉に、夢主(妹)は自分の事のように喜んで、お礼を言った。
それから二人は眠りにつくまで、近況を話す。
夢主(妹)は、藤堂との喧嘩や、土方からの説教…永倉と原田に花街に連れて行ってもらう約束をした事などを。
千鶴は、おにぎりを渡す為に最近よく話をする山崎のことや、炊事を率先して手伝ってくれる斎藤や井上、井戸の水を汲みすぎて転びそうになった時には、意外にも沖田が助けてくれた…など、
二人共毎日を楽しく過ごしていることを、時折、無表情な山崎のモノマネを夢主(妹)がしたりして、たくさん笑いながら話した。
お風呂や洗面などの生活面での不自由はたくさんあったが、屯所生活に慣れてきたのもあって、来たばかりの時の恐怖や命の危機は全く無かった。
夜、部屋に帰れば、夢主(妹)には千鶴がいたし、千鶴にも夢主(妹)がいる、それがとても心強い。
そして、あまり顔は合わせない夢主(姉)という存在が、夢主(妹)だけでなく千鶴にも「姉」のようだった。
「山崎さ~ん」
山崎の部屋の前で静かに声をかける。
すっと中から戸が開いて、夢主(姉)は部屋の中へ入った。