第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
げほっ
ごほっごほっ
まただ。
げほっげほっ
なんなんだ、一体。
ごほっ
「沖田さん?」
気がつくと、通り過ぎたばかの夢主(姉)ちゃんが僕の背中をさすってた。
「さわっ…ごほっ…るな!」
背中をさする手を振り払おうと、体を捩った。
それを無視して夢主(姉)ちゃんは背中をさすり続けてる。
ごほっ
これ以上さすられたくなくて、夢主(姉)ちゃんが体勢を崩すのなんて構わずに立ち上がった。
無理やり立ち上がったから、案の定夢主(姉)ちゃんは体勢を崩して床に転がる。
それをあえて冷たく見下ろしたのに、なんともなかったかのように立ち上がって、
「沖田さんの部屋ってここ?」
答えを待たずに、僕の部屋の襖を開けた。
「ちょっと失礼しまーす」
軽く、断りもなくずんずんと僕の部屋にはいってく。
そして引きっぱなしだった布団をおもむろに持ち上げたりしてる。
「ちょっとまっててください。」
そう言って、ぱたぱたと何処かへ走って行った。
そのまま部屋の襖を開けっぱなしにして、再び縁側に座る。
逃げればいいのに、水を入れた湯飲みの近くにちょこんと座る蛙に笑みが漏れた。
湯飲みの中の水をかけて、しばらく蛙と戯れてれば、のっそのっそと布団を抱えて夢主(姉)ちゃんが戻ってきた。
小さな夢主(姉)ちゃんは、まるで布団が歩いてるみたいでちょっと面白かったけど、気を許すわけにいかない。
「何?」
ぼすっと僕の部屋の前に布団を置く夢主(姉)ちゃんに、冷たく言い放つも、無視をされた。
そして再び断りもなく僕の部屋に入って布団をたたみ出す夢主(姉)ちゃんに、苛立ちがつのる。
僕の布団と、持ってきた布団を取り替えると、
「お医者さんには診せてます?」
なんて聞いてきたから、
「君には関係ないでしょ。出てってくれない?これ以上いられると斬っちゃうよ?」
なんて…苛立ちが止まらない。
それでも無視をして、新しく持ってきた布団をひきはじめる。
「へえ…立場わかってる?」
僕より数段小さい夢主(姉)ちゃんを、冷たく見下ろしても、夢主(姉)ちゃんの表情は変わらない。