第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
「夢主(妹)!」
突然の大声にビクッとなって、土方さんの方をおそるおそる見る。
土方さんは腕を組んで仁王立ち。
まさに鬼の形相。
あちゃー!騒ぎにしちゃったこと怒られるのかな?
だってそんな泣くとか思わないじゃん!
てか男に男だと思われた上で告白されて泣かれるって!
私が泣きたいわ!!!
今から落ちるであろう雷に備えて、私は目をぎゅうっと閉じて全身に力を入れる。
「てめぇ。何で言わなかった。」
うう。
「何でって。あの…そんな大した話じゃないって思って…」
「夢主(妹)、土方さんに相談してなかったの?最初は面白かっただけだけど…こないだは襲われかかったでしょ?何か対策とらないと危ないからちゃんと相談しろって言ったじゃん!」
「襲われただぁ?!!」
「い、いや、あの、ちょっとやそっとじゃ私負けないし、大丈夫だなって思って…」
「そういう問題じゃねぇ!!!」
土方さんに告げ口した後、お姉ちゃんは「じゃあねー」とか言って、飄々と何処かに行ってしまった。
ううう…
こわいよー!
「土方さん、怒らないって言ったのに!」
「てめえふざけんなよ!」
ぐいっ
「??!!」
いきなり腕を引っ張られ、そのまま視界には土方さんと天井が見えた。
パニックになった私は咄嗟に立とうと力を入れるものの、どんなに必死に抵抗しようとしても固定された腕がビクともしない。
ど、ど、どうしよう。
ますます混乱している私を見て、土方さんが溜息をつきながら手を離した。
「…振りほどけないだろうが」
未だにへたり込んでる私を見下ろしながら、土方さんは私に手を差し出した。
「お前があんまり聞き分けがねぇから手荒になった。悪かった。」
差し出された手を取って立ち上がる。
土方さんが言いたい事が、私の頭にやっと入ってきた。
「…ごめんなさい。」
「わかればいい。ただ、お前ら、俺の隣の部屋に変えてもらう。」
「…はい。ありがとうございます。」
「ったく。手間かけさせやがって。さっさと言ってりゃいいものを。」
土方さんが呆れたような溜息をついて頭をかく。
「…だって」
「ああ?何だ?まだ分かってねえのか?」