第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
「…てめぇ。自分の立場がわかってんのか。こっちは怪しい動きしたら斬るって言ってんだ。」
ズキン
心臓が痛んだ。
そうだよ。
知ってるよ。
最初に言われたもん。
でも、でも最近ちょっとは信用してもらえてきたなってよろこんでただけに、その言葉に思った以上に酷く傷ついてしまった。
「…わかっています。ごめんなさい。」
すっかり気を落としてしまって、自然と小さくなった私の声に、一瞬、土方さんが動揺したようだった。
「…いや、今のは言いすぎた。お前の事は信用してる。ただ、隠し事はすんな。こっちはでかくなってきた隊を守るのに敏感になってなきゃいけねぇんだ。」
土方さんがちょっと焦ってる。
私はますます落ち込んでしまった。
この人はいつも皆の事を心配して言ってるのに。
私は自分のことばっかだ。
何が女の子としてのプライドだ。
わかってるつもりになって調子のって。
最悪だ。
信用してるって言ってくれて嬉しいのに。
ううっ。
自己嫌悪で泣けてきた。
でも泣いちゃだめだ。
ウザすぎる!
必死で涙を抑えて土方さんの方を見る。
「わ、笑わないでくださいね?」
「笑わねぇし、怒んねぇから。言ってみろ。」
溜息まじりで土方さんがそう言った。
「実は…」
「あ!夢主(妹)ここにいた!」
言おうと決心をつけたところでお姉ちゃんが入ってきた。
「何だ?今取り込み中だ。」
土方さんが睨みつける。
お姉ちゃんはそれに気付いてるのか気付いてないのかわからないけど、そんな土方さんを無視して私に笑顔を向けた。
「夢主(妹)、また告白されたんだって?相手の隊士の人が泣きながら言いふらしてるよー!」
「ちょっ!マジで?!」
土方さんの眉毛がピクリと動く。
「…おい、夢主(姉)。どういう事だ?」
いつになく静かな声で土方さんが聞く。
「え?だから、夢主(妹)、たまに隊士の人に好きって告白されてるじゃないですか。今日も言われて。その相手の隊士さんが、振られたってもうワンワン泣いちゃって大変な騒ぎで」
お姉ちゃんがやっぱり笑いながら話す。