第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
土方さんの鋭い眼差しが怖すぎたから、私は目を瞑っていっきにまくしたてた。
私が悪かったけど、私の気持ちもちょっとはわかってほしいじゃん!!
「だって!私一応16年も女の子やってきてるのに!男だと思われたまま好きとか言われて、複雑すぎたんだもん!」
あれれ。抑えてた涙が出てきちゃった。
うう。最悪だ。
でも止まらない。
「男装してるからしょうがないけど、女として微妙すぎて情けなかったんだもん!」
もう言ってることがよくわからなくなってきた。
あーもう終わった。
説教第二ラウンド始まっちゃう。
ぐるぐるしている私を見て、土方さんが今まで聞いた中で一番じゃないかってくらい深く深く溜息をはいた。
「くだらねぇ事でぐちぐち悩みやがって。お前が男だろうが女だろうが、関係ねえんだよ!」
そう言うと、土方さんは涙でぐちゃぐちゃになった私の顔を、自分の着物の袖でぐいぐいと拭いた。
「ま、俺はお前が女で良かったよ。おかげで流行りの衆道に便乗する必要ねぇからな?」
へ?
さっきとは違う意味でパニックになってる私を残して、土方さんは部屋から出て行こうと歩き出した。
「顔洗って来い。百年の恋もさめるようなツラになってるぜ。」
そんな事を言って、にやり、とひとつ。
ふたつめは、フンと鼻で笑って、土方さんは出て行く。
その後ろ姿をそれはそれは間抜けな顔して見送った。