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【薄桜鬼 トリップ】さくら玉

第1章 季節はずれの桜の木


ざしゅっっっ

「ぎゃあああああああ!」

「!?」

ようやく落ち着いてきた鼓動を再び跳ね上がらせる音。

…斬った?斬ったの?今…!!!

断末魔の叫びと共に、何かを切り刻む音と何か液体が噴出す音が同時に聞こえる。

心臓が飛び跳ねた。

そのわずかな隙をついて、夢主(姉)の手から少年が飛び出ていく。

「ちょっと!何を――」

おそらく少年もとっさに反応してしまったのだろう。

怖いものは見たい。見て、なーんだこんなもんか、と安心したい。 人間は誰でもそんなものだ。

「ああもう!」

夢主(妹)は舌打ちすると少年の後を追って飛び出した。

そこに見た光景は…

ああ…人間死ぬまで何が起こるかわからないんだな…

妙に冷静にそんな言葉が頭をよぎる。

それは、まさに地獄絵図だった。

さっきまで自分たちに絡んでいた男は、無残な姿で転がっていた。

暗闇を月明かりが照らしている。その明かりだけで理解するには十分なほど見える。

足元に血の海が広がっている。

もうとっくに人間の形をしていない物体を、笑いながら切り刻んでいる人物…化け物にも見える男達。

夜にも目立つ、変わった模様をした袖の羽織を着ていた。

そして…おもわず叫びたくなるほど怖かったのは、白髪で目が赤く光っていたことだ。

やばい・・・人間じゃない・・・

夢主(妹)は動くこともできずその場に立ち尽くした。

「夢主(妹)っ!」

無声音で叫ぶ夢主(姉)の声に、夢主(妹)は我にかえった。

夢主(姉)はまだ家の影に隠れたままだ。こちらの光景は見えていない。

夢主(姉)が薄情なわけでも臆病なわけでもなく、いざという時の為にもどちらかは気づかれてはいけない・・・という本能で動いていた。


先に飛び出した少年は、腰が抜けたのか座り込んでいる。

夢主(妹)は音を立てないように少年に駆け寄り、少年のわきをかかえて引きずった。

ばきっ

少年の尻にしかれ、木の枝を折ってしまった。

その音で、白髪の男たちがこちらを向く。

にやりとしたその表情は、まるで新たな獲物を見つけたかのような歓びに打ち震えている。

ゆっくりとまるでスローモーション画面を見ているように近づいてきた。




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