第1章 季節はずれの桜の木
「……あれ?」
三人は思わず首をかしげた。
どこに行ったんだ!と男たちが声を荒げる場面を想像していたのだが。
いくら待っても彼らは現れない。
「……見失いすぎちゃった??」
夢主(妹)がつぶやく。
「いや、そんなに差がなかったと思うんだけど…」
夢主(姉)もあれれ?と首をかしげる。
「あの…ありがとうございました。…お二人は?」
姉妹ははっと少年の方を振り返る。忘れていた。
「えっと…私たちは…」
夢主(妹)が答えようとした瞬間。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
絶叫が聞こえてきた。
「な、何??」
夢主(妹)がとっさに家の影から通りへ顔を出し、様子を伺おうとした。
「夢主(妹)!危ないから隠れてて!」
夢主(姉)が夢主(妹)をひっぱって引き戻し、聞き耳を立てる。
「くそ、なんで死なねえんだよ!…駄目だ、こいつら刀がきかねえ!」
恐怖に溢れたような男達の声が聞こえた。
夢主(姉)と夢主(妹)はこの状況を冷静に判断しようとしていた。
何かとても恐ろしいものが近づいている。
「ここでじっとしていよう。落ち着いて。なるべく息を潜めて。」
夢主(妹)はそう言うと、夢主(姉)に少年を落ち着かせるよう目配せする。
夢主(姉)は真剣な面持ちでうなずくと、少年の肩を抱いた。
少年は小太刀をぎゅっと握り締め震えながらも気丈に耐えている。
…さっき男たちに狙われていたのはこれかな?
小太刀なんて現代で持っている人はほとんどいない上に、身近に本物を見ることなど出来るのは博物館くらいかもしれない。
普段から見慣れない物の目利きなんてできるわけもない姉妹にも、それが上等だとわかる代物だった。
夢主(姉)と夢主(妹)が少年の持つ小太刀に目を奪われていたその時、先程より奇妙な音が近づいてきた。