第5章 1864年 ー文久四年・元治元年ー 【前期】
「土方さんて案外アレだったんですねー。」
「…何の話しだ」
「そうやってすっとぼけてると知らないですからね。」
どうしろっていうんだ…俺に…
これからまだまだ新選組をでかくしなけりゃいけねぇってのに。
「…失敗だったな」
いつの間にか日が暮れかかっていた。
夢主(妹)が俺の仕事がやりやすい様にと、溜まった書類を片付けている。
「何時の間に帰ってきてたんだ?」
「今ですよ~今」
相変わらず、次の作業に移るまでが素早いやつだ。
俺は気にせずに仕事に没頭する。
「この手紙に添える書類、こないだ近藤さんに預けてそのままだ。夢主(妹)、ちょっと近藤さんとこ行ってー」
「はい。これでしょ?」
「…どうして」
「え、だって後で使うって言ってたじゃないですか。」
何が「どうして」なのか意味が分からないという顔で書類を渡してくる。
ったく、隙のねえ…
俺は苦笑しながらそれを受け取った。
「あ!!」
「何だ突然」
「土方さんにあげようと思ってたお菓子!さっき全部食べちゃった!」
この世の終わりみたいな顔して叫ぶから、何事かと思えば。
「…別にそんな声出すことじゃねえだろうが。ってか菓子?」
「しんぱっつぁんから貰ったんです!美味しかったからせっかく我慢してとって置いたのに!あ~私のウッカリもの~!!」
「はっ」
思わず吹き出しちまった。
隙…ね。
「お前はそれでいいよ。」
「いや!このウッカリ直さないと、いつか大きなヘマをしそうで恐いっす!」
「お前のヘマなんて想定内だ。大いにやらかせ。」
「ヘマしたらしたで、めっちゃめちゃ怒る土方さんが言わないでください!」
頬を膨らませてそっぽを向く夢主(妹)の横顔を見て、俺の顔も少しだけ緩む。
「そうだ!」
バタバタとまたかけて行く。
ったく、少しもじっとしてやしねえ。
溜息をつき、やりかけの仕事に手をつけた。