第5章 1864年 ー文久四年・元治元年ー 【前期】
ぱたぱたと足音が帰ってきたかと思えば、俺の机にお茶が置かれた。
…梅の花が添えてある。
「…これどうした?」
「お菓子の代わりに、せめて見た目だけでもと思って。疲れを癒せますように。」
俺の好きな花を知ってたっつーわけではないだろうが…
「…もう手放せねーかもな…」
「え?」
「いや、可愛いなって言ったんだ」
「可愛いですよね!良かった~!」
夢主(妹)は嬉しそうにそう言うと、またどっかに消えちまった。
「花のことじゃねーんだけどな…」
もう少し、このままで。
風のように駆け抜けるあいつを見守るのも、いいかもしれねえ。
…もう少しだけ。