第1章 季節はずれの桜の木
「漢字、書き方が難しすぎて全然読めないけど、年号だけは読めるよ。妙にリアルな立て札だよね。」
夢主(妹)が制札を凝視しながら未だ顔を崩さずに話し続ける。
「ごめ…ちょ…私には全然わからないんだけど…」
夢主(姉)は勉強が苦手で、字を見ると鳥肌が立つ部類の人間だ。
「なんかね。えっとー…税のなんちゃらがどーのって感じの話が書かれてると思う…」
夢主(妹)は逆に勉強は苦にならない方だ。
「…つまり?ここは…なんだかえらい昔ってこと?」
道にある札の年号が昔だったからといって、すぐにそれを信じるほど単純ではなかったが、さっきまで身に起こっていた不思議な現象と、周りの景色のせいで二人は何故か妙にすばやく納得してしまった。
そのとき、柄の悪い怒鳴り声が静かな空気に響いた。
反射的に声のした方に振り向くと、そこには華奢な少年を取り囲む3人の男たちがいる。