第4章 興味と疑心と大義名分
夢主(姉)は一人広間に呼ばれた後も、何を考えているのやら、誰かと目が合えばにこりとひとつ、笑顔で返していた。
それを土方は苦々しそうに見ている。
「夢主(姉)君、何度もすまないね。今朝の妹君の腕はたいしたものだった!聞けば、君も一緒に修行を積んでいたらしいじゃないか!」
近藤が裏表の無い笑顔で夢主(姉)に話しかけた。
こういう時の、近藤の存在はありがたい。
「いえ…私には才能が無かったので、十三の頃には夢主(妹)に抜かれていました。」
「瞬発力は負けず劣らずにあると思ったが・・・・・・」
斎藤が口を出す。
今朝の試合での夢主(姉)の挙動がよほど気になったのだろう。
「さあ?どうでしょう?」
夢主(姉)はこの状態でも怯むことなく淡々と答える。
「単刀直入に聞く…お前ら、本当に姉妹か?正直、特におめえのことが信用できてねえ。」
土方は夢主(姉)を見極めようと厳しい視線を向けている。
夢主(姉)は、さすがに驚いたように目を見開いた。
「それは…聞かれたことが無いのでなんと答えたらいいのか…見てわかりませんかね…?証拠…証拠…顔?目はーお父さん似って言われてましたけど、あ、でも夢主(妹)はお母さん似って言われてたし…。鼻…については言われたこともないし…。あ、でもよく似てないって言われてたし…。あ!そうだ!おへその形が一緒です!おへその隣にほくろがあるんですけど、それも一緒なんです!!!」
目をきらきらさせてさも良い証拠が見つかったと言わんばかりに土方を見た。
「…ぷっ」
原田が笑いをこらえかねて吹き出した。
「ぶはははは!いやいやいや!ねーちゃん!それじゃあもう一回脱いでみるか?」
よほどつぼに入ったのだろうか・・・ 原田は膝を叩きながら大爆笑だ。
「んー?おへそならどうぞ?」
夢主(姉)は特に気にもせずに応答する。
「そうか、へそは見せてくれるのか!」
原田はにやけ顔であごをさすった。
その様子を見て、土方が深いため息をつく。
「…もういい。正直、おまえの処遇は決めかねてる。何か言いてえことがあるなら聞いてやる。」