第2章 不安と殺気と事情聴取
土方に促され、千鶴は事情を話し始めた。
もともとの住まいは江戸にあること。
連絡の途絶えた父を探して京にきたこと。
そして、そのまま千鶴が何の気なしに父親の名前を告げた途端、 部屋中の空気が変わった。
どうやら千鶴の父親である雪村綱道は幕府方の協力者で、新選組が目下探索中の重要人物らしい。
しかも屯所を訪れたことが少なく、探索は困難を極めているとのことだ。
…千鶴ちゃんは助かるかも…
夢主(妹)はほっとしてその様子を見ていた。
実際、千鶴を殺すわけにはいかないという事で、新選組で保護することに決まったようだ。
…とりあえずだけど、それは良かった…
「こっちはそれでいいとして、あとの二人はどうするよ?」
藤堂の発言で、夢主(妹)はぎくりとした。
…そうなんだよね。
私達はどうしようってことなんだよね。
千鶴ちゃんが予想外に助かって良かったけど、この展開が吉と出るか凶と出るか…
夢主(妹)がため息をついたそのとき。
「そんな…!私だけ助かるわけにはいきません!この二人は私を何度も助けてくれました!悪い人のはずはありません!!」
千鶴が叫ぶ声が部屋中に響いた。
皆がきまずそうに目をそらす。
そんな中、沖田が夢主(妹)の前に近づいてきた。
「君さ、僕と勝負してみない?」
「!!!」
夢主(妹)は驚いて沖田をみる。
「ちょ…いくら腕が立つって言っても総司とやるのはさすがに無理があんだろ!!」
藤堂もその発言に驚いたようだ。
「そうかな?僕はイケると思うけど…。土方さんもさ、知りたいのはそれでしょ?」
沖田は夢主(妹)を見る目を細める。
夢主(妹)は大きくため息をつくと、決意した様子で沖田をみつめ直した。