第1章 季節はずれの桜の木
「うーさむいー」
12月になったばかりとは言え、もうすっかり冬。
身を切るような寒さが二人を襲った。
「やっぱ着替えてくればよかったー。」
道場から自宅までは少し離れていて、その間にある商店街が閉まるのは早いので、二人は着替えずに袴のまま外に出ていた。
「早くしないと閉まっちゃうよ〜!走るよ。夢主(妹)」
「走ればあったかくなるかなー。」
二人はすっかり暗くなった道を急いだ。
いつもの帰り道。いつもの商店街。いつもの…
「あれ…?道…間違えた…?」
先を走っていた夢主(姉)が急に止まった。
「えっ何?急に…って…ここどこ?」
「あれ何?」
夢主(姉)が指さした方向を見ると、そこには一本の大きな桜の木が立っていた。
「えっ今何月だっけ?桜?うわぁ大きい・・・」
確かにその桜は今まで見たこともないような大きさだった。
しかも満開。
「キレー…」
ふたりはいつもと違う景色だという事も、お肉のことも忘れ、桜に見入ってしまっていた。
ぶわっ
風が吹いた。途端に満開だった花びらが宙に舞う。
「「わっ!」」
散った花びらたちが二人を竜巻のように巻き込んだ。
花びらのあまりの勢いと強風で息ができない。
「「………っっっっ!!!」」
二人はそのまま気を失った。