第10章 1865年 元治二年
そういえば、私は伊東さんについて全然知らない。
と、いうより…新選組の歴史に詳しかったわけじゃないから、これからの出来事は年表のおおまかな事しか分からない。
伊東さんって、新選組でどうなるんだっけ?
近藤さんに書類を渡し終えて、土方さんの部屋まで行く途中…そんな事を珍しく考える。
伊東さんと言えば…今朝の定例会議で山南さんの表情が凄く暗かった。
やっぱり参謀なんていう、総長レベル…ってか上の立場に伊東さんが来た事が原因…のひとつだよね。
例えば今私が…刀を持てなくなっても、あそこまで追い詰められないけど…文字が読めなくなったりしたら…土方さんの役に立てなくなっちゃう。
そんな中に、私と同じくらい文字が読めたりする人が小姓として来たら…耐えられないや。
山南さん大丈夫かな…
山南さん…
山南さん…て…
やばい…思い出しちゃった…
史実ははっきり言ってわからないし、時期も私の年表には無いから分からないけど…
父親と観てた新選組のドラマか映画で…
山南さんって、逃亡したか何かで粛清されたんじゃなかったっけ…?
切腹で…たしか介錯はかわいがってた沖田総司に…みたいな内容だった気がする…
ちょっと待って。
それが本当なら…どうしよう。
その時が近い気がしてならない。
土方さんに話そうか…いや、だめ。
もう土方さんの部屋の前に着いてしまったけど、襖が開けられない。
そうだ…お姉ちゃんから貰った手紙…
お姉ちゃんが出て行く時に貰った手紙の中に、「もし山南さんの様子がおかしかったら読んで」というものがあった。
それまでは読まないで、そうならなかったら読まないで、と注意書きがあったから、凄く気になったけど、ちゃんと読まないでおいた。
そのまま自室に戻って、その手紙を出す。
『夢主(妹)へ
これは山南さんの様子が変だと思ったら読んでください。
*絶対守って!変だと思ったら読んで、そうじゃなかったら読まないで。』
と書かれた手紙をそっと開いた。