第2章 不安と殺気と事情聴取
「…これからどうしよう。私達、どうなるんだろう。」
千鶴の表情から笑顔が消えた。
確かに。それは何より大切なことだ。
「事情を説明した方が良いかもしれないなと思って…」
千鶴は暗い表情のまま出口の襖を見やる。
そういえば、この子が何故あの場にいたのか聞いてなかった。
姉妹ほどじゃないにしても、あの時間に一人であんな場所にいるのはやはりおかしい。
「そしたら、まだ死ぬわけにはいかないってわかってもらえる気がするの。」
そう言った千鶴はさっきまでとは別人のようだった。
その眼差しはきつくしっかりとしている。
姉妹が千鶴の話に聞き入っていると、ゆっくりと襖が開き、 斎藤が顔を出した。
「副長がもう一度話しを聞きたいと言っている。そこのアンタ」
そう言うと、斎藤は夢主(妹)を見た。
「え、私?」
夢主(妹)は戸惑いながら夢主(姉)と千鶴を交互に見て、斎藤に聞き返す。
「そうだ。…アンタだけでいいそうだ。付いてきてくれ。」
「…わかりました。」
夢主(妹)が斎藤に付いて出て行こうとすると、千鶴が意を決したように前へ出た。
「私も!私も連れていってください!!」
斎藤が千鶴を一瞥する。
「私からもお願いします。私とこの子は元々知り合いではありません。私からはこの子の事情は話せません。」
夢主(妹)はさっきの何か深い事情がありそうな千鶴の表情を思い出していた。
「………ついて来い。」
夢主(妹)と千鶴が斎藤について出て行く。
部屋を離れる直前、斎藤はちらりと一人残された夢主(姉)を見やった。
夢主(姉)はその視線に気づき、特に何も考えずにっこりと微笑んだ。
その笑顔に何を思ったのか思っていないのか、斎藤はふと目を逸らすと、すたすたと歩いて行く。
夢主(妹)と千鶴はお互い見つめ、覚悟を決めたようにうなづきあうと、 斎藤を追っていった。