第2章 不安と殺気と事情聴取
…お姉ちゃんにに口止めしておかないとな。
夢主(妹)はこんな状況なのにもかかわらず、何故だか呑気な夢主(姉)を見てため息をついた。
余計な事を進んで喋るとは思わないが、認識は合わせておくに越したことはない。
「千鶴ちゃん、ちょっとごめんね。」
そう言うと夢主(妹)は夢主(姉)を連れて部屋の隅へ行く。
「お姉ちゃん。これから誰に聞かれても、私達が未来から来たことは言わないで。あとお姉ちゃんが例え何を思い出しても、歴史の話しはしないで?」
こそこそと夢主(姉)に耳打ちした。
「わかった…けどなんで?」
夢主(姉)はきょとんと夢主(妹)を見返す。
「いい?私達が未来を知っているってしられたら、どうなると思う?ここは新選組の屯所だよ?」
「………えっと?」
少し考えてギブアップする夢主(姉)に、夢主(妹)はため息をついた。
「あのね。未来を知ってるなんて、絶対に利用したくなるに決まってるでしょ。それ自体はここで重宝されて命が助かるかもしれないけど、でも私でも全部知ってるわけじゃない。何か重大なことが起こってそれを言わなかったら、恨まれるかもしれない。」
「……」
「…それに、未来なんて知って良い事なんてあるわけないじゃん。」
夢主(妹)は新選組に訪れる未来を思い、気持ちが沈んだ。
今を一生懸命生きている人たちに向かって言える未来なんて、 例えハッピーエンドでも存在しない。
沈痛な面持ちの夢主(妹)を見て、夢主(姉)は微笑む。
「そっちの理由の方が私にはわかりやすいかな。」
感覚派の夢主(姉)は夢主(妹)の心情を察してくれたようだった。
「じゃあそういう事で。あと、ここに来た流れとかも私に任せてね。」
「わかった。任せる。」
二人はうなずきあい、千鶴の方へ戻った。
「ごめんね。仲間外れにしちゃったみたいで。」
夢主(妹)が謝ると千鶴は首をぶんぶんと横にふった。
「ううん。こんな状況になって、色々考えることもあるでしょう?二人は姉妹なんだし。」
「ありがとう。」
千鶴の何気ない言葉に、少し気持ちがほんわかとした。