第2章 不安と殺気と事情聴取
「…夢主(妹)見ればわかるでしょ!こんな可愛い子が男なわけないじゃない。ねぇ?千鶴ちゃん。」
夢主(姉)は呆れながら夢主(妹)を小突いて笑った。
「お二人とも、さっきと随分印象が違うんですね。」
千鶴がくすくすと笑いながら二人を見る。
「ふふ。そうかもね。特に夢主(妹)なんか全然違うでしょ?普段はこうやってぼーっとしてるんだよ。」
「お姉ちゃんこそ!なんかずっとにこにこしてさー!」
「あ、あの!悪い意味で言ったんじゃありませんから。」
喧嘩をはじめそうな二人に、千鶴が慌てる。
「千鶴ちゃん、私と同い年でしょ?敬語使わなくて大丈夫だよ。これからあとどのくらい一緒にいる事になるかわからないけど…仲良くしようっ!」
夢主(妹)が屈託のない笑顔で千鶴に手を差し出す。
千鶴はその言葉に微笑みながらも、差し出された手の意味がわからず首をかしげた。
「あ、そうか。えっと、和解の印に手を握り合うっていう異国の文化で…」
「異国…?異国から来たの?」
「いや!ちょっと近所のおじさんが異国かぶれで教えてもらったんだよね。今心境的に丁度良いかと思って…」
気を抜きすぎたのか、うっかりと余計な事をしてしまい、夢主(妹)は慌てて取り繕った。
未来から来た事は黙っておいた方が良い。
夢主(妹)はそう考えていた。
まず信じてもらえるはずがないし、未来を知っていれば必ず聞きたくなる。
ただでさえ争い多いこの時代に、こんな爆弾抱えてるなんて、争いの火種にしかならない気がしていた。
帰れるのか帰れないのかもわからない状況で、うかつな事はしたくなかった。