第8章 1864年【後期】決意の時
いつまでもごまかしきれるとは思わなかったけど・・・
私が今までに起こった出来事を知っていたことを、土方さんはどう思ったんだろう?
これまで築いてきた信用を一気に失ってしまったかもしれない。
だって・・・池田屋でも蛤御門でも・・・救えたかもしれない命のこととか・・・何で言わなかったんだって思うよね?
それに、今まで一生懸命土方さんのお仕事を手伝ってきたこと全部が嘘くさく見えてしまうかもしれない。
何よりも・・・・・・
土方さんの信用を失ってしまったのではないかなって思うと・・・
夢主(妹)には、今までの三人の会話が耳に入っていない。
顔をあげて土方の表情を見るのも怖いのだろう。
手元の袴をぎゅっとつかみ、下を向いたままだった。
そんな夢主(妹)の心中など、この場にいる三人には手に取るようにわかっているのだが。
何も言葉を発しない夢主(妹)に変わって、再び夢主(姉)が口を開く。
「信じてくださるんですね?」
未来から来た、なんていう話をされて、信じる人なんているのだろうか・・・夢主(姉)はそう思いつつ話した。
だから、土方と山南の言葉はかなり意外なもので、表情にこそ出さないがかなりほっとしていた。
「正直・・・信じるも信じないも関係ねぇくれえとんでもねぇ話だがな。さっきも言ったが、そんなとんでもねぇことの方がお前ら見てるとしっくりくる。ったく・・・・・・おかしな事は重なるもんだ。」
とんでもねぇおかしなことなんざ、変若水の存在で免疫がついちまった。
それに・・・この状況でこれだ。
この話が真実である方が普通に思えてくる。
「ありがとうございます。」
夢主(姉)はそう言って深く頭を下げると、ふぅとひとつ大きく息をはいて、にこりと笑った。
そして、隣にいる夢主(妹)に視線を向け、
「土方さんならば・・・おわかりいただけてますよね?」
この子がこの隠し事の為にどれだけ苦しんだか・・・
そんな言葉を含めて、夢主(姉)は改めて土方をじっと見つめた。
「ああ。わかってる。」