第2章 不安と殺気と事情聴取
夢主(妹)は慎重に言葉を選びながら昨夜の出来事を説明した。
浪士に絡まれていた少年と一緒に逃げたこと。
隊士達が浪士と戦っている間は物陰に隠れていたこと。
音をたてて気づかれたため、隊士が襲ってきたこと。
「…浪士の仲間と間違われたのだと思いました。私はともかく、後の二人は背を向けてかばい合っていたため、何も見ていません。」
きっぱりとそう告げ、土方の目を見据えた。
「斬られそうになった私を、ここにいる総司っていう人と、一君っていう人が助けてくれました。一般人を斬ろうとした隊士を粛清したのだと解釈しています。」
土方の目は相変わらず厳しいままだが、その奥にほっとした色が宿った。
「…今の話の通り、このガキらの認識なんざこの程度だ。」
部屋の中に、気が抜けたようなほっとしたようなため息がいくつも響いた。
「さっきからこっちのガキばっか話してるじゃねーか。おい。そっちのお前はどうなんだよ。今のコイツの話しは本当か?」
今度は夢主(姉)の方に視線をやる。
夢主(姉)は永倉を見つめ返し、にっこりと微笑む。
「うーん・・・。逃げていたのも助けられたのも本当ですし、さっきからの「見た見ない」がなんのことやらわかりません。あえて考えたことを話せというなら……この子を助けてくれてありがとうございました。」
全く邪気のない場違いな程の笑顔と声色に、さすがの永倉もそれ以上は何も言えない。
「…ならいいけどよ。」
厳しく睨んで見せている永倉も、子供相手に凄むつもりは本来無い。
夢主(姉)からそそくさと目を逸らし、部屋の隅へと移動していった。
「この子らもこう言ってることだし、何とかならんかね。まだこんな子どもじゃないか。」
井上が哀れむように言う。
「ま、俺は土方さんや近藤さんの決定にしたがう。」
原田は傍観を決め込んだらしい。
「…俺は逃がしてやればいいと思う。何か見たわけじゃなさそうだし。 何を見たにしても、あいつらが血に狂った―――」
藤堂が困ったようにつぶやく言葉に、夢主(妹)と少年はぎくりとした。
こいつ、今から余計な発言する!絶対する!
「少なくとも!!!!!」
慌ててふたたび夢主(妹)は大声を出す。