第8章 1864年【後期】決意の時
時刻は暁九つを過ぎている。
こんな時間に土方からの呼び出しなど、滅多に無い。
夢主(妹)は眠っているところを山崎に起こされた。
何事かと心配する千鶴に、半ば寝ぼけながら「何だろうね?」と言い、眠い目をこすりながら土方の部屋へ向かった。
失礼します、と襖を開ければ、土方の他に山南と夢主(姉)が居た。
そして何やら空気が重い。
何だろう?
一瞬にして目が冷めた夢主(妹)は、夢主(姉)の隣へ座った。
「悪いが・・・お前らに相談する時間は与えねぇ。そして、話は夢主(姉)・・・お前から聞く。」
夢主(妹)が座るやいなや土方は鋭い視線と厳しい声色で夢主(姉)にそう言い、夢主(姉)は何かを考えているかのように目を閉じている。
その様子に驚いて、一体何事かを問い質したい夢主(妹)だったが、どうやら場の空気はそうさせてはくれなかった。
夢主(姉)は目を開けると、隣に座る夢主(妹)をちらりと見て、ゆっくりとひとつ瞬きをした。
お姉ちゃん何したんだろう・・・
っていうか土方さん相談する時間は与えねえって言ってるけど・・・
ってことは・・・
もしかして・・・
と、夢主(妹)が気が付いたと同時に夢主(姉)は言葉を発した。
「信じる、信じない、は・・・土方さんと山南さんにお任せします。」
夢主(姉)はそう言って背筋を伸ばし、落ち着いた声色で話し出す。
「今からお話することは、私達姉妹にとっては真実であり、これ以上の偽りはないことに命をかけましょう。偽りだと判断された際は、即座に斬り捨てていただいてかまいません。」
その言葉に、土方の視線はより一層鋭いものになり、山南から放たれる空気も張り詰めた。
そして夢主(妹)は、今この状況が何であるかをおおよその理解ができて、命をかけると言い出した姉に揃って姿勢を正す。
夢主(姉)は、ふぅ、とひとつ呼吸を整えて、静かな落ち着いた声で…