第2章 不安と殺気と事情聴取
斎藤は「失敗を目撃」の報告を終えると、ちらりと三人に視線を投げた。
「私たち、何も見てません!」
少年がきっぱりと言い切った。
それを聞くと、土方の表情が少しだけやわらぐのが分かり、 夢主(妹)はその様子をみて肩の力を少し抜く。
…良かった。この少年は趣旨をわかってる。
お姉ちゃんは多分わかってない。
夢主(妹)は内心で苦笑して夢主(姉)を見た。
夢主(姉)は何を考えているのやら、何も考えてないのやら、 顔色を変えずに座っている。
「なあ。お前ら本当に何も見てないのか?」
「見てません!」
身を乗り出してきた藤堂に、少年は同じ言葉を繰り返す。
「お前じゃなくて、そっちの奴等はどうなのよ?」
藤堂の視線が夢主(姉)と夢主(妹)に降り注いだ。
夢主(妹)が慎重に発言する。
「見てません!」
夢主(妹)は、質問した藤堂ではなく、土方の目をまっすぐ見据えていた。
土方はその視線を、意味ありげに受け止めた。
そのとき、永倉がその場を割って問いかけてきた。
「あれ?総司の話では、おまえらが隊士どもを助けてくれたって話だったが…」
「ち、違います…!」
少年が慌てて沖田の方を見るが、当の沖田は相変わらずの笑顔のままだ。
「私達は、その浪士たちから逃げていて―――」
少年が事情を説明しようとするのを、夢主(妹)は腹に力を込めた大声でさえぎった。
「新選組の方たちは!!!!」
突然の大声に部屋中の全員が夢主(妹)に注目した。
注目のを浴びたことを確認すると、夢主(妹)は声を落とした。
「…私達に助けられるほど弱くないはずです。その話しは何かの間違いじゃないでしょうか。」
「…それもそうだな」
とにかく口を割らせようとカマをかけたのだろう。
意外な回答に永倉は少し驚いて話を畳む。