第2章 不安と殺気と事情聴取
…この人、「土方さん」って呼ばれてたよね。
土方って、やっぱりあの土方歳三?? うん、納得。カリスマ性半端ないかも。
と、夢主(妹)は、再び小説の中の人物像と照らし合わせる事に脳を働かせる。
「でさ、土方さん。…そいつらが目撃者?」
そう言って三人を一瞥した人は、幹部たちの中でも特に若く見える。
そしてその隣にいて、ちゃちゃを入れている、やたらごつい体の人と、長身でしなやかな体の人。
三人はそのままぎゃーぎゃーと言い合っている。
話の流れから、一番若そうな人は藤堂平助。
ごつい人は永倉新八、長身は原田左之助だとわかった。
ひぇ~・・・噂の(噂ではないが)剣豪達が沢山いる・・・。
夢主(妹)は、父が録画して大切に残してあった数年前の大河ドラマを思い浮かべつつ、だんだんと湧き上がる、緊張感とは別のわくわくとした高揚を感じつつ、様子を伺う。
その場の雰囲気に圧されて黙り込んでいると、ふと穏やかな雰囲気の大人の男性に「怖がらないでくださいね」などと声をかけられ、ほっとしたのだが…
その穏やかな雰囲気を纏った山南という男性を、「一番怖いのはあんただろ」という、土方の言葉に再び緊張感が増した。
慣れてしまえば、わきあいあい、という言葉がぴったりなのだと思われるこの状況だが、かの有名な新選組の屯所に居るという事実を核心に変えた夢主(妹)は、今後の展開をどうすべきかに考えを巡らせ、少年は緊張が溶けない強張った表情をしつつも何か言いたげにしていた。
夢主(姉)はその「わきあいあい」の様子を微笑で眺めている。
そして、場の空気を全てさらうようにして部屋に入ってきた男性は、新選組局長近藤勇だと名乗った。
---正解だった。ここはほんとに新選組なんだ・・・。
名乗られてしまえば、目の前に現実感が広がる。
近藤は丁寧に部屋にいる人を端から紹介し始めたが、それを土方が「情報をわざわざくれてやる必要はない」と、慌てて制止した。
近藤は困ったように笑うと、三人に向き直り、
「…そういうことだから、紹介もなく悪いが、本題に入ろうか。」
と、先程までとは違う厳しい表情になった。