第7章 1864年ー元治元年ー【後期】
「じゃあ、蕎麦でも食いに行くか!新八と平助が居なくて暇してんだ。」
「お蕎麦!私も平助としんぱっつぁんが居なくてちょっと寂しかったんですよね~。土方さんに許可貰ってきます!」
そう言って、ぱたぱたと走り去って行っちまった。
夕餉は要らないと伝えて、日が落ちきらないうちに屯所を出る。
必然的に夢主(姉)が働く甘味屋の前を通れば、暖簾を下げる夢主(姉)の姿が見えた。
その前を素通りする。
通り過ぎたところで、
「お前の姉ちゃんはすごいよな。お前らほんとによくやってるよ。」
と、夢主(妹)に言えば、ふふふと嬉しそうに笑った。
「夢主(妹)もああいう格好が本当なら似合うんだろうな。」
ふと、女物の小袖が良く似合ってた夢主(姉)を思い出す。
「んー・・・どうですかねー?私は袴のが動きやすくって好きだなー。」
首をかしげて夢主(妹)は言う。
「そんなもんか?女ってのはこう・・・なんつーか・・・きれいなもんとか身に付けたいって思ってたんだが。」
「きれいなモノとかは好きっちゃ好きですけど・・・今お金貰ったら・・・刀を見に行きますたぶん。あはは。土方さんにも同じようなこと言って笑われました。」
と、ころころと鈴が鳴るみてえに笑った。
平助の話じゃ、衆道寄りな隊士に好かれてるっつったが・・・まあ、女だって知らされてなきゃ、まさか女が混ざってるなんて疑いもしねえんだろうが・・・夢主(妹)の笑ってる顔は、そこらへんの姉ちゃん達より可愛いんだ。
それに気が付いた隊士はなかなかやるな。
平助は・・・まあ、あいつはもう気が付いてるか。
「それで土方さんが・・・-------」
嬉しそうに恥ずかしそうに土方さんの話をする夢主(妹)は、格別で、そんな顔をして話す夢主(妹)にとっての俺の存在は、土方さんの足元にも及んで居ないことを知らされる。
まあ、いいんだ。
別段、どうこうなりてぇってわけでもねえんだ。
ただ、考えこんで元気のねぇ姿が気になっただけだ。
笑ってる顔が見れればそれでいいさ。