第7章 1864年ー元治元年ー【後期】
蕎麦屋について席に着くと、店の姉ちゃんが注文を聞きに来る。
「原田さんお久しぶりですね。」
にこりと笑う姉ちゃんは、新八と平助が可愛いと騒いでた看板娘だ。
「おお。姉ちゃんも元気そうだな。」
軽く声をかけて注文をする。
巡察の癖で、店内を見回していれば、なにやらにやけてる夢主(妹)が目に入った。
「ん?何かあったか?」
「いえいえ。平助が言ってたとおりだなーと思って。」
「なにがだよ?」
にやけながら、自分では悪い顔を作ってるつもりの夢主(妹)がまた可愛いくて、思わず笑っちまう。
「しんぱっつぁんもよく言ってますよ?左之さんがすごーく女の子から人気があるって。」
「んー?そうか?」
寄ってきてくれる姉ちゃんはいるが、一番寄ってきてもらいたい女は、今目の前で他の男の話を楽しそうに話してるぜ?
なんて、な。
自分を鼻で笑う。
もうすぐ隊士が増える。
そしたら、こんな風にゆっくり蕎麦を食いに来る時間なんて作れねえかもしれねえな。
運ばれてきた蕎麦の湯気の熱で、少し頬を染めて、「いっただっきまーす!」と平助かよ、っつーくらい元気に言う夢主(妹)に、
「ゆっくり食えよ?」
と、声をかければ、蕎麦をすすりながら嬉しそうな笑顔が返ってきた。
その笑顔で今の俺は十分だ。
今は…な?