第7章 1864年ー元治元年ー【後期】
「"お佳ちゃん"に会っちゃったのかぁ。千鶴びっくりしたんじゃない?お姉ちゃん完全に無視してくるし。私なんて睨まれたことあるもん。いくら新選組の関係者だってバレない為って言ったってさ~やりすぎだよね~。」
「女優って言って〜」
ぶつぶつと夢主(姉)ちゃんについて文句を言っている夢主(妹)ちゃんと、それを笑顔で受け止めている夢主(姉)ちゃん。
そのやりとりを見ていたら、さっきまでもやもやとしたものはどこかへ消えてしまった。
「ふふふふふ。これから任務中の夢主(姉)ちゃんに遭遇するのがなんだか楽しみになってきちゃった。」
私がそう言えば、夢主(姉)ちゃんは少し目を見開いてから、これでもかっていうくらい優しく微笑んでくれた。
翌朝、井戸で会った沖田さんに、
「千鶴ちゃん、今朝は機嫌がいいね。」
と、私の顔を覗きこんで笑顔で声をかけられた。
「顔に書いてあるよ。…大丈夫だったでしょ?」
「はい」
そう応えると、千鶴ちゃんは顔になんでも出ちゃうからわかりやすいなぁ、と笑ってる。
もしかして、私を心配してくれてたのかな?
「今日は非番なんだ。一緒にお団子でも食べに行こうか?」
「え?いいんですか?」
「うん。土方さんに言っておくよ。」
唐突に誘ってくれた沖田さんはなんだかニヤリと何か企んだような悪いお顔をしていて…
その企みに私が気がついたのは、"お佳ちゃん"な夢主(姉)ちゃんが働くお店の前に着いた時だった。